東寺

京都タワーを見るとすぐに駅ビルに引き返し、街を見渡せる高さにある展望広場へ。近代的な建物に混じり、五重塔が建っている。それは奇妙な景観である。日本の京都という街では、時の流れは一定ではないようだ。バスに乗り、五重塔を近くで見るため東寺を目指す。やがて、パチンコ店のような外観の建物の前に建つ五重塔が現れる。その光景はシュールレアリストの作品のようであった。さらに東寺の中に入り、五重塔を見上げる。周りの景色に五重塔が「付け足された」ことによって起こる滑稽さもあるが、そもそも五重塔自体滑稽である。なぜ同じデザインの物を五つも重ねて「付け足した」のか。屋根は、一番上の部分だけにあれば、あとは不必要なのではないか。この「五つ重ねられた建物」は、カフカ先生を思い起こさせずにはいない。「ある朝、グレゴール・ザムザが不安な夢からふと覚めてみると、その建物は上に向かって五倍に増えていた」。