『スパニッシュ・アパートメント』

観てきました。冒頭の凝った編集―早回し、分割画面、クリック音とともに画面上に現れる書類など―を目の当たりにして、《テレビやビデオやインターネットにどっぷり漬かった世代》なんて言葉が頭に浮かびました。世代とかどうでもいいんですけど。
主人公のグザヴィエは小説を書きたいんだけど、父の勧めで経済学を学ぶためにスペインに留学。その「小説を書きたい」とか「経済学」とか、スペインに行ってからはあんまり描かれてなくて、いろんな国からの留学生が集まっているアパートメントでの騒ぎやら、人妻とのセックスやらあって、最終的に留学の期間が終ってフランスに戻り、外務省みたいなとこに就職したけど「やっぱヤダー!」ってなってスーツのまま走り出し、「オレは小説書くんじゃ!」つって、最後「オレはやっと離陸したんだ!」とか言って滑走路で両手広げておしまい。
さっきも言ったけど、留学中のグザヴィエは、アパートメントの仲間と騒いだり、フランスの恋人(アメリの人)と別れたり、人妻とセックスしたりしてるだけだから、小説書きたいとか経済勉強することに対する葛藤とかそういう成長してる雰囲気がまったくなくて、ラストでいきなり仕事放り出してつっ走ったところでびっくりした。このびっくり感が、つまり《テレビやビデオやインターネットにどっぷり漬かった世代》を表してるってことかいと思いましたよぼくは。
いろんな国の人が集まってる生活を見るのは楽しかったし、スペインの風景もきれいだったし、観光気分が味わえるので、そんなに嫌な映画じゃないです。こってりと主人公の悩みを見せられるより、軽やかに横道に逸れていく様子を早回しやダフトパンクをまじえながら見せてくれてありがとうセドリック・クラピシュ先生。